九州大学 電子材料工学研究室 (ITAGAKI LAB)

 本研究室では,全く新しい半導体材料の創出や,プラズマを用いた高品質半導体作製技術の開発,また独自に考案したユニークなバンド構造を持つトランジスタや量子井戸型太陽電池の研究を行っています.現在,下記3つのテーマについて研究を進めており,その一部は国内外の研究機関や民間企業と共同で研究を行っています.

1. 次世代型・超高速エキシトニックトランジスタの創成

「光配線」をLSI(大規模集積回路)内に導入する動きが始まっています.高集積化に伴い,電気配線の抵抗・配線間容量による信号遅延や電力消費が無視出来なくなったためです.しかし,従来のトランジスタを用いた場合,光(O)で伝送されてきた信号を一旦,電気信号(E)に変える必要があり,この時に生じる信号遅延や電力消費がボトルネックとなっています.
 そこで注目されているのがエキシトニックトランジスタです.エキシトニックトランジスタは,エキシトン(クーロン力で緩く束縛された励起状態の電子-正孔対)をキャリアとする,新しい原理のトランジスタです.光信号を直接処理することができるためO-E変換が不要となり,光配線のボトルネックが解消します. しかし,従来の半導体材料を用いたエキシトニックトランジスタは,①エキシトン解離エネルギーが低く,極低温(125K以下)でしか動作しない,②エキシトン再結合寿命が短く,キャリアがドレインに到達する前に失活する,という2つの課題があり,実用化の目途は立っていません.

 本研究室では,独自開発材料である"ZION"を用い,世界初となるエキシトニックトランジスタの室温動作を目指して研究を行っています.

エキシトニックトランジスタ

2. 超高効率・量子井戸型太陽電池の実現

量子井戸型太陽電池は、高い開放電圧・高い短絡電流といった特長に加え,その量子効果により赤外域での光電変換も利用出来ることから,従来太陽電池の効率を大きく超える,理論効率50%超の次世代太陽電池として期待されています.一方で,その井戸型ポテンシャルのために光生成キャリアの多くが井戸内で再結合するという本質的な課題を抱えており,上記理論効率は未だに達成されていません.

 本研究室では,我々が見出した "酸窒化物半導体"という新材料と"ピエゾ誘起バンドエンジニアリング"により、量子井戸型太陽電池の飛躍的な光電変換効率の向上と低コスト化を目指しています.

量子井戸バンド構造

3.レアメタルフリー環境低負荷型電子デバイスの創成

レアメタルは現在,テレビやスマートフォン,太陽電池に欠かせない透明電極や,LEDの発光層などに用いられていますが,供給安定性の観点や健康被害への懸念から代替材料の開発が急がれています.酸化亜鉛(ZnO)は資源が豊富で環境・人体への影響が小さく、絶縁体から金属的な伝導まで制御できることからそれらレアメタルの代替材料として期待されていますが,その性能は未だ十分ではなく、本格的な実用化には到っていません。

 本研究室では,スパッタリングプラズマを用いた新しい結晶成長技術"不純物添加結晶化法"を開発し、高品質なZnO膜を高格子不整合基板上に作製することに成功しています.

ZnO

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