太陽光発電関連研究
薄膜太陽電池製造用プラズマプロセス技術革新
および超高品質光安定アモルファスシリコン薄膜作製技術開発
人類文明の今後の発展において、3Eのトリレンマが最重要課題とされている。
すなわち、経済(economy)の発展には、エネルギー(energy)消費を伴い、これが化石燃料を主体とする現在のエネルギー需給構成から地球環境(environment)破壊につながるという三すくみ問題である。
また、年々世界人口・エネルギー消費量の増加とともに、地球温暖化の要因の1つに挙げられている二酸化炭素の排出量の増加を招いている(図1)[1-4]。
このトリレンマを解決するためには、環境を維持しつつエネルギー供給可能な新エネルギー技術の開発が必要である。
今、石油に代わる新エネルギーとして特に注目されているものに、太陽電池が挙げられる。
太陽電池には、太陽光のエネルギーを直接電気に変換できるため、クリーンで無尽蔵なエネルギーを生み出せるという利点がある。
| ![]() 図1.世界人口・エネルギー消費量・CO2排出量・南極におけるCO2濃度の年間推移 |
現在、最も普及している太陽電池は、資源が豊富なシリコン系太陽電池であり、単結晶(c-Si)や多結晶(poly-Si)などの結晶系とアモルファス(a-Si)系に分類できる。
結晶系の形成には1000度以上の高温が必要なことや、光の吸収係数が小さいため基板の厚さが200ミクロン以上あり、半導体材料の必要量が多いことから、コストが高いという問題点がある、
一方、アモルファス系である水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)薄膜太陽電池は、300度以下のプロセスで形成でき、光の吸収係数が大きいため厚さが1ミクロン以下で十分であることから、低コスト太陽電池として大いに期待されている。
本研究の目標は、12%以上の安定化効率を有する低コスト太陽電池の開発である。
上記の最終目標を達成するための課題として以下の3つが挙げられる。
1) 高光安定な低欠陥密度(1立方センチメートルあたり10の15乗個の欠陥)の膜を2.0nm/s程度の製膜速度で作製すること。
2) 光劣化を起こすクラスタの最小サイズと膜への取り込み量を明らかにすること。
3) 高光安定な膜を大面積(2m角)で製膜すること。
a-Si:H薄膜の堆積において,SiH3ラジカルの他に,サイズが0.5nm以下の高次シラン(HOS)のラジカルや,1-10nm程度の微粒子(クラスタ)が堆積に寄与する(図2)[5]。 我々は、クラスタが膜中に取込まれることで、光劣化現象[6]が起こるのではないかと考え、マルチホロー放電プラズマCVD法を開発した(図3)。 この方法を用いることで,プラズマ中で生成されたクラスタはガス流によって下流側へ輸送され、上流側に設置した基板にはクラスタの取込みが抑制されたa-Si:Hが堆積する。 我々の研究室ではマルチホロー放電プラズマCVD法を用いて、光劣化のない、光安定なa-Si:H膜の作製に成功している(図4)[7]。
上記の最終目標を達成するための課題として以下の3つが挙げられる。
1) 高光安定な低欠陥密度(1立方センチメートルあたり10の15乗個の欠陥)の膜を2.0nm/s程度の製膜速度で作製すること。
2) 光劣化を起こすクラスタの最小サイズと膜への取り込み量を明らかにすること。
3) 高光安定な膜を大面積(2m角)で製膜すること。
a-Si:H薄膜の堆積において,SiH3ラジカルの他に,サイズが0.5nm以下の高次シラン(HOS)のラジカルや,1-10nm程度の微粒子(クラスタ)が堆積に寄与する(図2)[5]。 我々は、クラスタが膜中に取込まれることで、光劣化現象[6]が起こるのではないかと考え、マルチホロー放電プラズマCVD法を開発した(図3)。 この方法を用いることで,プラズマ中で生成されたクラスタはガス流によって下流側へ輸送され、上流側に設置した基板にはクラスタの取込みが抑制されたa-Si:Hが堆積する。 我々の研究室ではマルチホロー放電プラズマCVD法を用いて、光劣化のない、光安定なa-Si:H膜の作製に成功している(図4)[7]。
![]() 図2. シランプラズマ中における HOSとクラスタの形成と 堆積のモデル |
![]() 図3. マルチホロー放電 プラズマCVD法 |
![]() 図4. 欠陥密度の光照射時間依存性 |
[1] World Population Prospects The 2004 Revision Hilights
[2] BP統計
[3] エネルギー・経済統計要覧2004年度
[4] 温室効果ガス世界資料センター
[5] M.shiratani et al., Thin Solid Films, 506-507 (2006) 17
[6] D. L. Staebler and C. R. Wronski, Appl. Phys. Lett. 31 (1977) 292
[7] K. Koga et al., JJAP 44 (2005) L1430
[2] BP統計
[3] エネルギー・経済統計要覧2004年度
[4] 温室効果ガス世界資料センター
[5] M.shiratani et al., Thin Solid Films, 506-507 (2006) 17
[6] D. L. Staebler and C. R. Wronski, Appl. Phys. Lett. 31 (1977) 292
[7] K. Koga et al., JJAP 44 (2005) L1430